温泉旅行というと、浴衣に着替え、湯けむりを眺めながらゆっくり過ごす時間を思い浮かべる人が多いでしょう。そこに、土地の水や果実、山の香りを生かしたクラフトビールが加わると、旅は少しだけ大人っぽく、奥行きのあるものになります。
山あいの温泉地・湯逢町は、古くから湯治場として親しまれてきた小さな町です。やわらかな湯ざわりの温泉、川沿いに並ぶ木造旅館、石畳の温泉街。そして近年は、町の湧き水と地元産の素材を使ったクラフトビールが旅人の楽しみになっています。
昼はカフェでゆっくりランチを楽しみ、夕方は温泉で体をあたためる。入浴後は、地元の食材を使った料理とともにクラフトビールを味わう。翌朝は、静かな朝風呂とコーヒーで旅を整える。そんなふうに、急がず、飲みすぎず、心地よい余白を大切にするのが、湯逢町で楽しむ大人女子旅の魅力です。
今回は、クラフトビール好きの女子旅におすすめしたい、湯逢町での1泊2日モデルコースをご紹介します。
湯逢町でクラフトビールを楽しむ
湯逢町のクラフトビールづくりを支えているのは、山から流れる澄んだ水と、季節ごとに表情を変える地元の農産物です。町の小さな醸造所では、定番のペールエールやヴァイツェンだけでなく、柚子、山椒、桃、りんご、焙じ茶などを使った季節限定のビールも造られています。
クラフトビールの面白さは、苦味やアルコール度数だけではありません。軽やかで飲みやすいもの、香りを楽しむもの、食事と合わせたいもの、デザートのようにゆっくり味わいたいものなど、一杯ごとに個性があります。
普段は「ビールは苦いから少し苦手」と感じている人でも、フルーティーな小麦ビールや、柚子の香りが広がるホワイトエールなら、意外と飲みやすく感じるかもしれません。友達と少量ずつシェアしながら、自分の好みを探す時間も、クラフトビール旅ならではの楽しみです。
1日目
11:00 湯逢駅に到着
湯逢駅に着いたら、まずは駅前の観光案内所で町歩きのマップを受け取ります。湯逢町はコンパクトな町なので、温泉街の中心部は徒歩で散策できます。少し離れた醸造所や展望スポットへは、町内循環バスを使うと便利です。
クラフトビールを楽しむ旅行では、運転をしないことが大前提です。電車で訪れれば、誰か一人が運転を担当する必要もなく、全員が気兼ねなく乾杯できます。荷物は宿へ預けるか、駅のロッカーを利用して、身軽な状態で町歩きを始めましょう。
駅前には、湯逢町の名物である湯けむりまんじゅうや、地元の果実を使った瓶入りジュースを販売する小さな店があります。到着直後に甘いものを少しだけ食べて、旅の気分を高めるのもおすすめです。
11:30 古民家カフェでランチ
最初に向かいたいのは、温泉街の入口にある古民家カフェ「麦と山」です。かつては味噌蔵だった建物を改装しており、太い梁や土壁を残した店内は、どこか懐かしく落ち着いた雰囲気です。
ランチには、地元野菜を使ったデリプレートや、湯逢町産の小麦で作る自家製フォカッチャがおすすめです。季節のスープ、ハーブサラダ、山菜のマリネ、地鶏のローストなどが少しずつ並び、見た目にも華やか。お酒を楽しむ予定がある日は、昼食を抜かず、しっかり食べておくことが大切です。
ランチに合わせてノンアルコールのクラフトドリンクを選ぶのも良いでしょう。例えば、柚子スカッシュや、ホップを使った香り豊かな炭酸ドリンクなど。醸造所へ行く前に、湯逢町の素材が持つ香りを少しだけ予習できます。
デザートには麦芽を使ったプリンやビール酵母を練り込んだスコーンが似合います。クラフトビールそのものではなくても、麦や発酵の文化に触れられる一皿を選ぶと、この後の醸造所見学がさらに楽しみになるはずです。
13:30 ブルワリーで試飲
ランチの後は町内循環バスで「湯逢ブルワリー」へ向かいます。温泉街から少し離れた川沿いにある小さな醸造所で、古い製材所を改装した建物の中に、醸造タンクとタップルームが並んでいます。
醸造所見学では麦芽、ホップ、酵母、水がどのようにビールになるのかを知ることができます。普段は何気なく飲んでいるビールも、原料や製法を知ると、味わい方が少し変わるものです。
湯逢ブルワリーの定番は、軽やかな飲み口の「湯逢ペールエール」、やわらかな香りが広がる「山霧ヴァイツェン」、柚子の皮を使った「ゆあい柚子ホワイト」の3種類という設定です。
ペールエールは、柑橘を思わせるホップの香りと、すっきりした後味が特徴。山霧ヴァイツェンは、小麦由来のやさしい口当たりで、ビール初心者にもおすすめです。柚子ホワイトは、温泉上がりの火照った体にも似合う、爽やかな香りが魅力です。
見学後の試飲は、宿のチェックイン前かつ入浴前であれば、少量にとどめるのが安心です。ビールを楽しむことが目的の旅でも、飲むペースはゆっくりと。気になる銘柄は、夜の食事に合わせて改めて注文するか、瓶や缶をお土産に選ぶのも良いでしょう。
15:30 温泉街を散策
醸造所から温泉街へ戻ったら、チェックインまでの時間は町歩きを楽しみます。石畳の通りには、温泉まんじゅう店、手ぬぐい専門店、陶器店、小さな本屋などが並んでいます。
クラフトビール好きの人には、醸造所オリジナルのグラスやコースター、ラベルをあしらった手ぬぐいなどがお土産におすすめです。自宅に帰ってから同じビールを飲む時、旅先で買ったグラスを使えば、湯逢町の空気を少し思い出せるかもしれません。
温泉街の写真を撮るなら、夕方前の光がおすすめです。木造旅館の格子戸、のれん、湯けむり、川沿いの柳並木。派手な観光地ではないからこそ、何気ない風景に温泉町らしい情緒があります。
16:30 温泉でリラックス
旅館に着いたら夕食前に温泉へ入りましょう。クラフトビールを楽しむ夜に備えて、先にしっかり温まり、部屋で休憩し、水分補給をしておくのが大切です。
湯逢町の温泉は肌あたりがやわらかく、湯上がりにしっとり感が残るといわれる設定です。露天風呂では、山の稜線を眺めながらゆっくり深呼吸してみましょう。昼間の移動や散策の疲れが、少しずつほどけていくようです。
入浴時間は長すぎないようにして、湯上がりには水をしっかり飲みましょう。温泉のあとにすぐアルコールを飲むのではなく、少し部屋で休み、体調が落ち着いてから夕食へ向かうことが安心して楽しむコツです。
19:00 クラフトビールで乾杯
夕食は温泉街のビアダイニング「湯けむり麦酒堂」へ。元は古い旅館の食事処だった建物を改装しており、木のカウンターと間接照明が落ち着く大人向けの空間です。
ここでは湯逢ブルワリーの定番ビールに加え、季節限定の樽生ビールが楽しめます。春は山椒セゾン、夏は桃のフルーツエール、秋は焙じ茶ブラウンエール、冬は黒糖スタウトなど、季節の食材を生かした一杯が登場します。
初めてクラフトビールを飲むなら、飲み比べセットがおすすめです。少量ずつ3〜4種類を試せるため、好みを見つけやすく、飲みすぎも防げます。友達と違うセットを頼んで、一口ずつ交換しながら味を比べるのも楽しいでしょう。
「これは香りが華やかだね」「こっちは食事と合いそう」「柚子の後味がすっきりしてる」と話しながら飲むと、ビールそのものだけでなく、その場の会話まで思い出になります。
クラフトビールに合った料理
クラフトビールをより楽しむなら、料理との組み合わせも大切です。湯逢町では、山の恵みと川の恵みを使った料理がよく合います。
軽やかなペールエールには、山菜のフリットや、地元野菜の天ぷらがおすすめです。衣の香ばしさとホップの苦味がバランスよく、最初の一杯にぴったりです。
小麦のやさしい味わいを持つヴァイツェンには、川魚のマリネや、柑橘を使ったサラダが合います。ビールのフルーティーな香りが、魚や野菜の繊細な味を引き立ててくれます。
柚子ホワイトには、湯豆腐や鶏むね肉の蒸し料理のような、やさしい味の料理を。柚子の香りが、出汁の風味や素材の甘みを邪魔せず、さっぱりと楽しめます。
濃いめの黒ビールやスタウトには、味噌で煮込んだ豚角煮、チョコレートを使ったデザート、燻製ナッツなどがおすすめです。甘さや香ばしさのある料理と組み合わせると、ビールの奥行きがより感じられます。
ただし、温泉旅では「せっかくだから」と飲みすぎないことも大切です。水やお茶を一緒に頼み、ゆっくりと食事を楽しみましょう。翌朝の朝風呂まで気持ちよく過ごすためにも、自分のペースを守ることが、上質な大人旅につながります。
21:00 夜の温泉街を散策
夕食の後はすぐにもう一度温泉へ入るのではなく、少し外の空気を吸いながら温泉街を散策するのがおすすめです。夜の石畳には行灯が灯り、昼間よりも静かで幻想的な雰囲気になります。
浴衣のまま歩く場合は、冷えないよう羽織を一枚持って出かけましょう。お酒を飲んだあとは足元にも注意し、無理に遠くまで歩かず、宿の近くをゆっくり楽しむ程度が安心です。
部屋に戻ったら、ミネラルウォーターを飲みながら、今日撮った写真を見返す時間を。クラフトビールのラベル、料理の写真、温泉街の夜景、友達との乾杯。何気ない一枚が、後から見返すと旅の空気まで思い出させてくれます。
2日目
7:00 朝風呂
2日目の朝は、少し早起きをして朝風呂へ。夜の温泉とは違い、朝は空気が澄み、山の静けさをより近くに感じられます。
前夜にお酒を飲んだ場合は、体調を最優先にしましょう。少しでもだるさがある、頭が重い、水分が足りていないと感じるときは、無理に入浴せず、まずは水分補給と休息を。朝風呂は、気持ちよく入れる状態のときに楽しむのが一番です。
体調が整っていれば、短時間だけ湯に浸かり、ゆっくり朝の景色を眺めます。湯上がりに冷たい水を一杯飲めば、昨日のにぎやかな時間とは違う、静かな旅の始まりを感じられるでしょう。
8:00 宿の朝食
朝食はごはん、味噌汁、焼き魚、温泉卵、季節の野菜など、素朴であたたかい和朝食がよく似合います。前夜にクラフトビールと食事を楽しんだ翌朝こそ、胃にやさしいものをゆっくり味わいましょう。
旅館の朝食には、その町らしい小鉢が並ぶことがあります。山菜の佃煮、地元の豆腐、野菜の浅漬けなど、派手ではないけれど、旅先の食文化を感じられる料理に出会えるのも楽しみです。
10:30 締めのカフェ
チェックアウト後は温泉街の「月灯り珈琲」へ。夜カフェとして知られる店ですが、午前中はやわらかな光が入り、ゆっくりコーヒーを味わうのにぴったりです。
おすすめは深煎りコーヒーと、麦芽を使ったビスコッティのセット。香ばしい焼き菓子は、クラフトビールの原料である麦の風味をさりげなく感じさせてくれます。
甘いものが欲しい人には、黒ビールを使ったチョコレートケーキもおすすめです。アルコール感は強くなく、カカオのコクを引き立てるために使われているという設定にすると、ビール旅の余韻を上品に残せます。
12:00 お土産を選んで帰宅
帰る前には、湯逢ブルワリーの缶ビールや、地元のソーセージ、燻製ナッツ、ビールに合うチーズクッキーなどをお土産に選びましょう。自宅で飲む分だけでなく、ビール好きの友達への手土産にもぴったりです。
持ち帰るビールは、旅行中に飲みきらず、帰宅後の楽しみにするのがおすすめです。
クラフトビールと温泉を安全に楽しむには
クラフトビールと温泉は相性のよい組み合わせですが、楽しむ順番と体調管理はとても大切です。
まず、飲酒後の入浴は避けましょう。アルコールを飲むと血管が拡張し、温泉に入ることでさらに体温や血圧が変化しやすくなります。のぼせ、めまい、脱水、転倒につながる可能性があるため、温泉は飲酒前に済ませるのが基本です。
また、ビールを飲む日は、水分も意識して取りましょう。乾杯のビールだけでなく、食事中に水やお茶をはさむことで、翌朝の体調も変わります。量を競うのではなく、香りや味わいをゆっくり楽しむことが、クラフトビール旅の醍醐味です。
そして、体調が優れないときは無理をしないこと。せっかくの旅でも、入浴や飲酒を「絶対にしなければならない予定」にする必要はありません。カフェで温かいお茶を飲み、部屋で休み、景色を眺めるだけでも、温泉地の旅は十分に満たされます。
クラフトビールと温泉の旅
湯逢町で楽しむクラフトビールと温泉の旅は、にぎやかに飲み歩く旅とは少し違います。温泉でゆっくり体をほぐし、地元の食材を使った料理を味わい、その土地で生まれたビールを一杯ずつ楽しむ。そんな穏やかな時間の積み重ねが、大人女子旅を豊かにしてくれます。
昼はカフェで地元の味を知り、夕方は露天風呂で山の景色を眺め、夜は友達と乾杯する。翌朝は静かな温泉とコーヒーで旅を締めくくる。予定を詰め込みすぎないからこそ、会話も景色も味わいも、心にゆっくり残ります。
